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2020.09.01

「ハレマメ」の危機。クラファンがなければとっくに廃業していた

松崎信太郎(「晴れたら空に豆まいて」代表)

東急東横線の代官山駅からほど近いビルの地下には、「晴れたら空に豆まいて」というちょっと変わった名前のライブハウスがある。2006年のオープン以来、ここには国内外のミュージシャンはもちろん、ダンサーやDJ、さらには落語、能、浪曲など古典芸能に携わる人々が出演し、ユニークな「文化」を発信し続けてきた。音響のみならず、照明もアナログにこだわった温もりのある空間、趣向を凝らしたユニークなフードにも定評がありリピーターも多い。
そんな「ハレマメ」も今、新型コロナウイルスの感染拡大により存続の危機に晒されている。クラウドファンディングや配信番組の制作、オンラインショップの開設など様々な対策を講じているが、まだまだ予断を許さない状態だ。そんな中、ハレマメの代表である松崎信太郎さんは何を思うのか。率直な胸の内を聞いた。

取材・テキスト・写真:黒田隆憲

 


YOU MAKE SHIBUYA連載企画「渋谷のこれまでとこれから」
新型コロナウイルスの影響で激動する2020年の視点から、「渋谷のこれまでとこれから」を考え、ドキュメントする連載企画。YOU MAKE SHIBUYA クラウドファンディングとCINRA.NETが、様々な立場や視点をお持ちの方々に取材を行い、改めて渋谷の魅力や価値を語っていただくと共に、コロナ以降の渋谷について考え、その想いを発信していきます。


 

──「晴れたら空に豆まいて」は、どのようなコンセプトのライブハウスですか?

松崎:代官山にある小さなライブハウスです。様々なアートが代官山の大地から芽を出し、豆のつる草のように太陽(希望)に向かって伸びてゆくことをモットーに、人々が有機的に繋がる「出会いの場」としてゆっくりと変遷してきました。

―ハレマメならではのこだわりというと?

松崎:お店のあらゆるモノを、人間の持つ「シックスセンス」的な感性と感覚に近づけることです。ライブハウスは、人間同士のエネルギー交換の場所であり、その交換をするための神聖なツールが音楽だと考えています。なので、人間や地球の持つ周波数帯に最大限近づける店作りをしてきました。

音響は完全なアナログサウンドシステムで、照明もLEDではなくアナログを使用しています。フードは全国の小さな農家さんや店舗とのつながりを生かし、様々なイベントに対応するため珍しい世界の料理にも挑戦してまいりました。

―なぜ代官山を選んだのでしょうか。

松崎:代官山は、ショッピングやデート、美容院に行く人が集う街。仕事ではなく「オフタイム」なので、時間の流れも、人々の歩くスピードもゆっくりです(笑)。大手のチェーン店は少なく、小さな個人店がひしめいており、そんなのんびりとした街の波動と共鳴する方々にご出演していただいてきました。

―どんなアーティストが出演していますか?

松崎:日本のミュージシャンはもとより、イスラエルやデンマーク、キューバ、フランス、アメリカ、ウクライナ、南アフリカ、ハイチなど様々な国のミュージシャンにご出演していただいてまいりました。世界中の国々の音楽家を集めることができるのは、東京ならでは、渋谷や代官山という立地条件ならではだと思っています。

―中でも印象に残っているステージというと、どんな光景を思い出しますか?

松崎:金延幸子さんの公演の時、ステージには細野晴臣さん、客席に鈴木茂さんと松本隆さんがいらっしゃったときは、「はっぴいえんどが揃った!」と思いましたね。もし大滝詠一さんもご存命だったらきっと来てくれていたはずなので。

―渋谷や代官山の好きなところ、刺激や影響を受けた文化はありますか?

松崎:私たちはあまり「渋谷」を意識することがないのです。代官山は渋谷区ですが、ちょっと特殊な場所で渋谷駅前のカルチャーとは違いますし。隣の駅は渋谷なのに、こんなにも違うか? と思うほどです。恵比寿のカルチャーとも違いますし、渋谷区役所近辺も違う。それぞれの小さな文化圏に、全国から多くの方々が来られる。その目的もそれぞれで、そんな多様性の幅の広さがもしかしたら「渋谷」なのかもしれません。

―渋谷で好きなスポットというと?

松崎:代官山の「カフェ ミケランジェロ(リストランテASO)」は好きです。店内の雰囲気と気持ちが落ち着く内装で、代官山らしいお店だと思います。

―新型コロナウイルスの影響で、多くの困難を経験されていると思います。ここまでどういった状況でしたか?

松崎:3月からイベントは半減し、4月から現在まで休業しています。配信を始めたのは5月からで、お客様にお越しいただくのは7月から少しずつといった形なので、基本的には休業状態です。お店は壊滅的な状況で、廃業の可能性は十分あります。

この間、クラウドファンディングや様々な補助、助成金などを使い延命措置をさせていただいている、率直にいうとそんな状況です。クラウドファンディングのおかげで、延命措置を取らせていただいています。これがなかったらとっくに廃業でした。

―支援の思いが広がり、クラウドファンディングでは約1300万円が集まりました。最も嬉しかったのは、どんなことでしたか?

松崎:その大きな金額もそうですが、ハレマメに対し想像以上に多くの方より暖かいご支援とご声援をいただいたことです。こんなにも気に留めてくださっていたのかと。何より大きな勇気をいただきました。感謝しかありません。私たちが今新たな取り組みに挑戦していることの動機そのものです。

―その「新たな取り組み」とは、どういったものでしょうか。

松崎:「TOKYO HARE-MAME TV」という配信番組の制作が始まり、オンラインショップ「晴豆商店(HARE MAME STORE)」を開設することができました。オンラインショップはコロナ禍以前からの取組だったのですが、クラウドファンディングに後押しをしていただいたという形ですね。

ショップは8月13日にオープンしました。全国のレア情報が集まる、小さなライブハウスならではのアイテムをお届けしています。番組のテーマは、「ココロとカラダとタマシイに良いもの」。まだまだ始まったばかりなので何も言えませんが、配信番組の登録者数が短期間でおよそ3500人に達したことは大きな喜びでした。まだまだ頑張ります。

―特に困っていらっしゃること、その解決のために必要なサポートで期待されていることを教えてください。

松崎:本格的な営業は再開しておらず、今は配信とオンラインショップに精力を注いでいます。視聴していただける方には、できるだけリアルでライブ感のある音質と演出を心がけています。また、ショップについては皆さんの暮らしに寄り添う品々を、面白いストーリーと共に心を込めてお届けできればと思っています。ぜひホームページに遊びにきていただけると幸いです。

―今回の出来事で、代官山の文化にはどんな変化があると思いますか?

松崎:今なお大変深刻な状況であることには変わりません。突然幕を下ろされ、照明の電源を落とされたような状況が続いています。私たちに限らず、多くの同業者の皆さんはそれぞれのやり方で、この困難にどう立ち向かうか考えているところだと思います。私たちもいつまでこの場所にいることができるかわかりません。ただし、文化が消えるなどということはありません。形態を変え、変容しながらも私たちは表現の手段を見つけるはずです。

―守りたい代官山の魅力を最後に教えてください。

松崎:代官山は都会のオアシス的な場所です。渋谷という世界的にもよりすぐりのメトロポリタンでは、全ての時間が洪水のように流れています。そんな中、代官山には小さな専門店がひしめき、私たちもひっそりと佇む小さなお店の一つです。

この街は、大きな流れの支流の脇にポツンと現れた小さな池のような存在かもしれません。疲れた日常を癒すことのできる、ほんわりした街の空気そのものが魅力です。

 

■INFORMATION

晴れたら空に豆まいて
〒150-0034 東京都渋谷区代官山町20−20 モンシェリー代官山B2
03-5456-8880
http://haremame.com

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